黒野元基は119期生。この期は訓練時に痛ましい事故があり、模擬レースの回数が極端に少なかった。その影響もあったか、黒野は初勝利まで約9カ月を要している。デビュー直後は決して目立つ存在ではなかった。
　しかし、初勝利後は着々と成績を伸ばし、ちょっとした足踏みはありながらも、勝利数や勝率をアップさせていった。攻め筋もキャリアを重ねるごとに多彩となり、差しやまくり差しが主武器の時期もあれば、次第にまくり強攻も増えていった。また、イン戦も入り始めた当初からそつなくこなした。しばらくは内寄りコース時に好成績が偏っていたこともあるが、外からの攻撃力に日々磨きがかかり、気が付けばコース不問のオールラウンダーとして、ついにA1級昇級も果たした。2020年は6コース以外はすべて3連対率70％超。舟券貢献度の高さも相当だ。
　2021年はG1やG2の記念レース参戦も増えるだろう。格上相手にどこまで通用するか。積み重ねた幅広い攻撃性を真っ向からぶつけていきたい。

「人は見かけによらない」というが、愛知の黒野元基はその代表だ。
外見はほんわかした感じだが、実際は違う。「水上の暴れん坊」という人もいる。強気のレースをするからである。ボートに乗るとスイッチが入るのだ。
養成時代はあまり目立つ存在ではなかったが、リーグ戦勝率は上から7番目の6.09をマーク。常に勝負できるポジションをキープし、要所要所で伸るか反るかの勝負に出てプロデビューしてきた新星である。
実戦の強さは、ハートの強さと同根であるが、それは沸々と燃える闘争心とは異なる。マイペースで、周囲に惑わされない芯の強さである。
デビュー2年で勝率を4点台にすると、あっという間にA1に駆け上がったが、そこにはオカと異なる勇猛果敢なレースがあった。相手を怖れることなく立ち向かっていく水面の姿にファンの共感が集まっている。
そのスタイルは今後も変わることはないだろう。そしてそれは、ファンとの共鳴によってますます高まりをみせるに違いない。